
美しいピアノの音色に乗せ、やさしくのびやかな歌声が響き渡る。ピアノ弾き語りシンガーソングライターの戸田明香音さんは、昨年ニューアルバムをリリースし、念願だった地元ホールでのワンマンコンサートを叶えた。夢にたどり着くまでの道のり、そして芽生えた思いとは。
心に響く歌を届けたい
人生初のステージは小学2年生の時だった。ギターが趣味だった父親の発案で家族バンドを結成し、老人ホームなどで慰問ライブを開催。母親、姉、妹が昭和歌謡を歌う側で「歌が下手だった」戸田さんは、3歳の頃から得意のピアノを弾いた。活動を続ける中で実感したのは歌の力。「おじいちゃんやおばあちゃんの喜ぶ顔を見て、私も歌いたいと思うようになりました」。将来の夢は、ピアニストか調律師から、シンガーソングライターへと変わっていった。
中学・高校では吹奏楽部に所属。トロンボーンを担当し、練習に明け暮れた。持ち前の負けん気とセンスを発揮して、高校時代は全国大会でソロパートの座を射止めたこともある。高校3年生になると、本格的なボーカルレッスンを受けるため、アーティストのプロデュースも行うスクールに入校。そして、高校卒業と同時にピアノ弾き語りのシンガーソングライターとして活動を始めた。
ファンの思いものせた1枚
高校生の時から制作してきた楽曲は、ほぼ実体験がベースになっている。「恋愛にも自分からわざと波を求めて、どうしようもない日々を切り取って歌にしていました」。楽曲づくりとの向き合い方がガラリと変わったのは、姪の誕生がきっかけだった。無償の愛を注ぐ中で、つらい恋愛の歌や悲しい曲調は減り、やさしい曲が増えたという。「姪っ子は私がアイドルだと思っているみたいで、『大きくなったらあーちゃんみたいになる』って言っています」(笑)
他のアーティストから羨ましがられるほど、「本当にいい人ばかり」のファンに囲まれ、戸田さんの笑顔は輝いている。「ファンの皆さんは常々『いつか私たちが明香音ちゃんの助けになりたい』と言ってくださっていました。そのお言葉に甘え、クラウドファンディングで支援を募り、完成したアルバムが『愛の花束』です」。「過去の自分も、今の自分も、未来の自分も総じて想像できる」をテーマに、ファンと共に作った記念の1枚は思いもひとしおだ。
音楽の力で地元を元気に
アルバムのリリースコンサートは、地元に新しく開館した西神中央ホールで行った。本番に向けて下地づくりにも注力。ファンに西神中央へ親しみを持ってもらうため、ホール前の広場で1年間フリーライブを実施し、地元の商店への営業周りにも汗を流した。地道な活動が応援の輪を広げ、コンサートは大盛況。「地域の方々の助けがあったからこその成功です」と笑顔が弾けた。「音楽は一生やるつもり」と明言する戸田さんの、次の目標は?「5人に増えた姪っ子たちとステージに立つこと。もちろんセンターは私ですよ(笑)。そして、より地域に根ざした活動を続け、愛する地元を音楽で盛り上げていきたいです」。
プロフィール

ピアノ弾き語りシンガーソングライター
戸田 明香音(とだ あかね)さん
1989年神戸市生まれ。
家族でバンドを結成し、小学生時代から週末には老人ホームなどで慰問ライブを行う。高校卒業後、ピアノ弾き語りスタイルでの音楽活動をスタート。東京で経験を積んだ後、2015年に関西へ戻り、神戸を拠点に活動中。「KOBEまちなかパフォーマンス」の第1期登録アーティスト。
インフォメーション

戸田さんのライブスケジュールやその他の活動については、オフィシャルウェブサイトへ。
彼女の魅力を堪能できるアルバム「愛の花束」はサイト内ウェブショップで販売中。各種音楽配信サービスでも視聴可能。
https://akaneiro.bitfan.id/
取材ウラバナシ
「父と私は性格が同じ」という戸田さん。音楽の道に進むことを強く望み、今の活動を一番応援してくれているお父さまの、好きな曲は「願い」だそう。アルバムに収録されているので、ぜひチェックを!