
パティスリー激戦区と言われる東灘で、ファンを増やしている「パティスリー クレデリアン」。ショーケースに並ぶケーキはキラキラと輝き、リボンやハートをかたどったチョコレート細工のデコレーションに胸がときめく。「宝石みたいなケーキが作りたくて」。そう話すのは、オーナーパティシエの宮寺晴香さん。洋菓子の奥にある、彼女の物語をひも解いてみた。
創意と技で感動を呼ぶケーキを
厳選した素材を使い、甘さを抑えた飽きのこない味が魅力の「クレデリアン」の洋菓子。中でも評判を呼んでいるのは、オーダーごとに一から組み立てる特注ケーキだ。「お客様のイメージする味や形、贈られる方のストーリー、シチュエーションなどを詳細にうかがいながら頭の中で造形し、その場でさっとラフ画を描いてご提案します。ケーキに不可能はないと思っているので、どのようなご要望もお断りしたことはありません」と宮寺さん。スポンジをキャンバスに、生クリームやフルーツ、チョコレートで表現する世界は緻密で繊細、そして遊び心にあふれている。「わーっ、すごい!」。ケーキを見た瞬間、お客様から上がる驚きと喜びの声がやりがいだ。
菓子の道を拓いた友達との約束
宮寺さんは菓子作りが得意でもなく、ケーキに思い入れがあったわけでもない。では、なぜパティシエに?「進路に悩んでいた高校3年のある日、友達と、一番に結婚するのは誰かって話になったんです。仲間の1人が『式でメイクを担当する』と言い出したので、私も弾みで言っちゃったんですよ。『じゃあ、ウェディングケーキ作るわ』と。冗談っぽいこのひと言がきっかけで、名古屋製菓専門学校へ進学しました。元々モノづくりは好きだったし、大事な友達との約束を目標にすれば、仕事も頑張れる気がして」。専門学校卒業後、金沢のホテルに就職すると、生菓子と焼菓子の基礎を貪欲に吸収した。終業後は深夜まで飴細工の練習に没頭し、休日返上で講習会にも参加。知れば知るほど菓子の世界は奥深く、向上心は尽きなかった。「当時はただ、ウェディングケーキを作るために必要な知識や技術を多く習得したいという思いが強かったんです」。ホテル勤務時代に苦楽を共にした先輩とは今も交流が続き、学びを記録したメモからは、時折レシピ開発のヒントを得る。どちらも宮寺さんを支える大事な原点だ。
多くの笑顔と絆が生まれる店に
静岡のホテルや大阪の個人店などでも経験を積み、「クレデリアン」を構えたのは2023年のこと。開業までの道のりでは挫折も味わい、30歳の時には建設会社の営業に転職。パティシエを辞めたことで、製菓こそが自分の誇れる技術だと気づき、自身の作りたいケーキを自らの手でお客さんに届けたいという熱意に火がついたという。「洋菓子は私の人生の一部であり、人を笑顔にできるもの。仏語で、〝未来に向けて絆を作り上げる〟という意味を持つ『クレデリアン』から笑顔を広げ、たくさんの人と絆を結んでいきたいです」。
プロフィール

パティスリー クレデリアン
オーナーパティシエ
宮寺 晴香(みやでら はるか)さん
1987年三重県生まれ。高校卒業後、名古屋製菓専門学校での学びを経て、ホテル日航金沢に入社。静岡、兵庫、大阪などでの経験を踏まえ、2023年に自店をオープンする。趣味はドライブと食べることで、「シルクロードウイグルレストラン ムカーム(大阪)がおすすめ」。アメリカを旅し、現地の人と文化に触れることが夢。
インフォメーション

Pâtisserie Créer des liens
同店のスイーツはハラール(イスラム教徒の食文化)にも対応している。また、「ヤマダストアー六甲アイランド店」、「大日寺の宿 京都吉祥院」(京都)、「Cafe la Route 121」(大阪)、「ハラール和食みのり」(大阪)でも楽しめる。
店名 | Pâtisserie Créer des liens |
---|---|
電話番号 | ☎078-803-8709 |
営業時間 | 10:00〜19:00 |
所在地 | 神戸市東灘区甲南町5-2-12 |
取材ウラバナシ
気になるのは高校時代の約束。結局、ウェディングケーキは作った?「7人の仲間のうち4人は希望通りに。遠方の式場まで車で運ぶのは大変だったけれど、有言実行できたし、喜んでもらえてよかったです」