長らく続く窮屈な暮らしの中で、音楽は一服の清涼剤。シンガーソングライターmacoさんの、伸びやかでそっと語りかけるような歌声が、深く心に染み入る。
楽曲に込める家族への想い
「お客さんを入れたちゃんとしたライブは1年くらいできていません。早くコロナを乗り越えて、多くの人に直接、僕らの音楽を聞いてもらいたいです」。時折のぞく柔らかな笑みが、歌声の印象と重なる。ギターリストの九埜元哉さんとLIKALIFEを結成し、コロナ前は大阪の飲食店などでライブ活動を行ってきた。温かな言葉とメロディーで紡いだ楽曲は、家族や仲間に向けたものが多く、大手企業などのCM曲にも起用されている。「僕が一番安らぎを感じるのは家族なので、曲を作る時は自然と家族の顔が浮かびます。LIKALIFEを名乗り始めた時期と、結婚して子どもが生まれるタイミングが重なったことが大きく影響しているんだと思います」。
コロナ禍での新たな気づき
ライブへの情熱を、今は楽曲作りに注ぐ。「お盆に妻の実家へ帰って、久しぶりにお墓参りに行きました。その時に山の上から見た景色が鮮明に頭の中に残っていて、故人を想う楽曲を作りたいなと。毎日、ピアノの前に座って格闘中です」。詞とメロディーが一緒に浮かび、完成したワンフレーズから広げていくのがmacoさんのスタイルだ。「人に提供する曲はスッと書けるんですが、自分で歌うとなるとなかなか進まないですね」。コロナ禍にできることをと、新しい企画にも挑戦した。弾き語りのカバー曲動画を365日アップする「毎日カバー」。歌声に励まされたというフォロワーの反応に、ライブとはまた違う喜びと達成感を見いだせた。
日常に寄り添う音楽でありたい
音楽への芽生えは中学2年の時。当時人気だったゴスペラーズに衝撃を受け、友人たちとアカペラグループを結成する。中学3年のスキー合宿で初めて歌声を披露すると、クラスメイトらにもてはやされた。「天然パーマの髪や背の低さなど、小さい頃からコンプレックスが多く、自分を表現するのが苦手でした。唯一自分を好きでいられるのは、歌っている時でした」。教育大への進学を目指していた高校3年の時、思いがけず音楽の先生から音大への道を勧められる。「選択科目で音楽を履修し、授業で曲を作ったりする中で、先生は僕の才能を認めてくれていたのかもしれません。まず、親を説得しなければと初めて目の前で歌い、じゃあ頑張ってみたらと背中を押してもらえました」。3年前からは母校である大阪音楽大学短期大学部の講師になり、二足のわらじを履く日々。学生たちと同じ目線に立ち、自分の経験を踏まえて指導する。「授業では、テクニックにとらわれず、感動できる歌を歌ってほしいと伝えています。まるで物語を聞いているように感じてもらえる歌を届けてほしいと思うんです」。若き才能に刺激を受けながら、自分もシンガーとしてステップアップしていきたいと語るmacoさん。「暮らしに寄り添い、誰もが気軽に聴ける歌を歌い続けます」。
プロフィール
アコースティックユニット LIKALIFE(ライカライフ)
maco(マコ)さん
1988年神戸市生まれ。兵庫県立星陵高校を卒業後、大阪音楽大学短期大学部(ポピュラー・コース ヴォーカル)へ入学。バンド活動を経て、2013年に大学の同級生だった九埜元哉さんとLIKALIFEをスタートさせる。現在は母校の他に、音楽教室や専門学校でも講師も務めている。
インフォメーション
LIKALIFE ライカライフ
神戸市出身のシンガーソングライター遠藤真人(maco)と奈良出身のアコースティックギタリスト九埜元哉(もっちゃん)によるアコースティックユニット。何気なく過ぎる1秒も人生(LIFE)であり、愛である。そんな想いを胸に、暖かな言葉とメロディーを紡ぐ。確かな歌唱力と繊細なアコースティックサウンドは、各方面から高く評価されている。
Youtubeチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC7fRmmKKj8xAeWXShooiJEw
取材ウラバナシ
macoさんは現在2児のパパ。長女のピアノと長男のドラムの練習時には、つい熱くなってしまうとか。