
2023年1月9日は、のはしたろうさんのプロレスラー人生に深く刻まれる1日となった。生まれ育った垂水で念願の自主興行を叶え、師と仰ぐスペル・シーサーさんとの初のシングルマッチが実現。61分3本勝負の結果は2対1でのはしさんが勝利し、試合前に公言していた「師匠超え」を果たした。試合後、まだ熱気が残るリングサイドで、のはしさんのこれまでの歩みや未来について聞いた。
地元と師匠に熱戦で恩返し
「いやー、今日は本当に楽しい試合でした。スペル・シーサーさんは僕がプロレスラーになった時からの先生。若い頃は、ちゃんこの味付けから社会人としての礼儀作法まで、いろいろと教わりました。そんな懐かしい思い出がリング上で走馬灯のように駆け巡り、グッと来ちゃいましたよ。地元や師匠に少しは恩返しができたかな」。充実感に満ちた顔で熱戦を振り返るのはしさん。159㎝と小柄な体型から日本最小レスラーの異名を持つ。20年のキャリアで培った強靭な肉体と精神は体格差をモノともせず、次から次へとダイナミックな技を繰り出す。愛弟子の成長を身をもって知ったスペル・シーサーさんは、「出会った頃は線が細く、メガネをかけた礼儀正しい少年だったけれど、今では体も大きくなり貫禄がついた」とたたえ目を細めた。
プロレスが震災時の力に
「ガリ勉でまじめな少年」が漫画に影響を受け、無類のプロレス好きになったのは小学4年生の時。ビデオで試合を観て、殴られても蹴られても相手に立ち向かっていくプロレスラーの姿に言い知れぬ感動を覚えた。小学6年生で阪神・淡路大震災を経験。焼け野原になった長田を目の当たりにして打ちひしがれた時も、プロレスが勇気を与えてくれたという。「両親が教師をしていたことから、将来は僕も大学に進学して教員免許を取ろうと思っていました。でも、高校3年生で進路を決める時に、なんか違うぞと思い始めて。神戸に日本初のプロレスラー養成学校ができたと聞き、面接を受けて合格することができました。練習は厳しかったのですが、自分の選んだ道に責任を取りたかったので、辞めるという選択肢は浮かびませんでした」。

磨いた技に一層の円熟味を
2004年からはみちのくプロレスに所属。東日本大震災で被災した際には、津波で全てを失った街に神戸での記憶を重ねた。「今度は僕がプロレスで人々に勇気を与える番だと思い、各所でチャリティーマッチを開催しました」。
コロナ禍では活動中止を余儀なくされ、暗闇の中で心が折れそうになったこともある。遠ざかったお客さんが前と同じように戻ってきてくるだろうかと不安は尽きないが、「やっぱりライブが一番。ようやく観客の声出しが緩和され、気持ち良くリングに上がっています。お客さんの熱気と声援は力になると今日もひしひしと感じました」。不惑を超え、体の衰えは感じてもプロレスへの情熱は衰え知らず。「まだプロレスを観たことがない人に魅力を届けたい」と走り続ける。
プロフィール

プロレスラー(みちのくプロレス所属)
のはし たろう さん
1982年神戸市垂水区生まれ。神戸のプロレス団体・闘龍門を経て(2002~2004年)、現在はみちのくプロレスに所属。東北6県を中心に活動している。デビュー戦は2002年メキシコシティーにて。得意技は逆打ち。野球観戦が趣味。
インフォメーション
株式会社ワールド・ワンpresents
みちのくプロレス旗揚げ30周年記念神戸大会開催決定!
2023年8月27日(日) 13:00試合開始
会場:神戸サンボーホール
【参加予定選手】 のはしたろう、新崎人生、ザ・グレート・サスケ、スペル・デルフィン、スペル・シーサー、他
【チケット料金】 5,000円(当日6,000円)~8,000円(当日9,000円)
★チケットは春ごろ「のはしたろう公式オンラインショップ」にて販売します。
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取材ウラバナシ
試合会場となった「おさかなの学校」のあるマリンピア神戸は、のはしさんの思い出の場所。「実家が近く、高校時代はプロレスラーを夢見て海岸線を走っていました。マリンピア神戸の閉館は残念ですが、おさかなの学校は営業中なのでぜひ」。