
ファッション誌でフェムテックの特集が組まれ、女性用風俗が地上波ドラマの舞台になる昨今。セクシュアリティについてオープンに話せる場も増え、日本人の性に対する捉え方が変化してきた。萩原佳音(とぅるもち)さんは、そんな時流を先導する一人。タブーの壁を崩し、セクシャルウェルネス(性の健康)と向き合っている。
大人に必要な性情報を発信
「近ごろは子どもへの性教育が広がりをみせる一方で、大人に向けた情報発信はまだ少ない。思春期に性教育を受けていない大人や結婚前の男女に、より良いコミュニケーションが築ける性の情報を届けたいと思っています」。
ラブライフカウンセラーとして1000人以上の性の悩みに寄り添ってきた萩原さんは、活動の幅を広げるため、2021年にUnwindを創設。肌に優しい国産潤滑剤「mahoro」の開発に取り組み、クラウドファンディングの力を借りて販売までこぎつけた。次に手掛けた性生活分析診断ウェブアプリ「tawagram」もサービスがスタートしたばかり。
経済産業省が主催する女性起業家支援プログラムの一員にも選ばれ、萩原さんの活躍に多くの視線が注がれている。

新卒でアダルト系IT企業へ
「中高生の時は主体性がなく、周りの評価を気にしすぎるタイプで、人と踏み込んだ話ができなかった」という萩原さん。性について女友達と抵抗なく話せるようになったのは、大学生になってからだ。「サークルでも男子たちが笑ってネタにしている輪の中に同じノリで入っていくと、私だけ『奔放なヤツ』みたいに揶揄され、ジェンダーギャップを感じました。それがすごく嫌で、真面目に性と向き合っているってことを証明しようと、メディアにおけるアダルトグッズの取り上げ方の変遷を卒業論文のテーマにしたんです」。
フィールドワークでは国内外の専門ショップなどを巡り、情報収集に励んだ。その中で得た事実を伝えたいと、記者を志す。けれども、書きたいものを発信できる記者になるまでには時間がかかるとわかり、あえなく断念。ならば性産業の現場で知見を広げようと、アダルトライブチャットを運営するIT企業に就職した。
性の課題を解決するために
偏った知識から女性パフォーマーに疑似恋愛を超えた要求をする人、メンタルヘルスに不調をきたした男性ユーザー…。働く中で見えた業界にはびこる問題に、課題意識が芽生えた。また、業務の一環としてSNS等で女性向けの性情報を発信し始めると、反響は拡大。性教育や避妊具についてなど、多様な悩みが寄せられた。
やがて「性の問題を解決するために、自分にもできることがあるのでは」と考えるようになり、フリーランスとして活動を開始。SNSの発信力を高めながらラブライフカウンセラーの資格を取得し、キャリアを重ねて起業に踏み切った。
Unwindは「プレジャーを持って主体的に生きる人を増やす」をミッションに掲げている。「今後はダイバーシティも活動のキーワードとし、性の課題をより広い視野で捉えながら、自己と他者の違いを理解し尊重して生きることの大切さを伝えていきたいです」。
プロフィール

株式会社Unwind 代表取締役
ラブライフカウンセラー®
萩原 佳音(とぅるもち)さん
1995年神戸市生まれ。神戸女学院大学在学中に、性教育とジャーナリズムへの関心を深める。卒業後はアダルト系IT企業でWebディレクター・マーケターとして約2年間活躍した後、ライター・セックスカウンセラーとなる。2018年から性教育イベント「ローションタッチアップ会」を主催するなど、セクシャルウェルネス関連活動に取り組んでいる。
インフォメーション

Unwind
性教育やコミュニケーションに関するワークショップ、コンテンツ監修、コミュニティづくり、WEBアプリ開発などを展開。2023年には大阪公立大学ヘルステックスタートアップス、経済産業省J-StaX女性起業家支援プログラムに採択される。活動の詳細、性のお悩み相談はこちらから。
Instagram /@trumochi
カウンセリング /https://trumochi.com/
取材ウラバナシ
萩原さんの趣味の一つが音楽。大学時代に軽音サークルで出会い、昨年結婚したパートナーと「結構パンクな感じやハードコアな重めなバンド」を楽しんでいるそう。音楽とパートナーの支えを力に、萩原さんの挑戦は続きます。