コロナ禍でリモートワークにシフトする会社が増えている。多様な働き方が急速に生まれつつある今。枠にとらわれず働く、あるノマドワーカーを訪ねた。
クライアントに好印象 仕事場はキャンピングカー
取材場所に指定されたのは、海辺の駐車場。そこに大きなキャンピングカーが停まっていた。トイファクトリー社製のGT。最近乗り換えたばかりという自慢の愛車が、ウェブデザイナー山本秀勝さんのオフィスだ。靴を脱ぎ、おじゃました車内には、座り心地の良いソファにテーブル、ミニキッチン、広々とした2段ベッドまである。大型のエアコンやテレビ、電子レンジが設置され、ソーラーパネルも搭載。必要な電力までまかなえるというから、使い勝手の良さや快適さは申し分ない。突然始まった在宅勤務やテレワークに、多くの人があたふたした自粛期間中も、山本さんはいつも通りのペースで仕事をこなしていた。「テーブルにパソコンやカメラを置いてウェブ会議をしたり、おかげさまで忙しかったですよ」。ユニークなワークスタイルはクライアントからのウケも良く、商談もスムーズに進むという。
アフターコロナはもっと自由な働き方を
サーフィンやスノーボードを趣味にもつアウトドア派の山本さん。憧れのキャンピングカーを手に入れ、このスタイルで仕事をするようになって2年が経つ。以前は朝早く会社に出勤し、夜遅くまで働くのがルーティンだったが、家族との時間をもっと大事にしたいと、フリーランスを選んだ。キャンピングカーを仕事場にしたのは、トレーラーハウスを事務所にしている人に触発されて。今は時間や場所に縛られず、電波さえ入ればいつでもどこでも仕事ができる。家族と遊びに行った東京ディズニーランドの駐車場や道の駅、ある時は富士山の麓でハンモックに揺られながらパソコンを開く。隙間時間で家事や育児にも協力するようになった。「キャンピングカーを持つと人生が変わると言いますが、本当にそうでした。僕は〝好き〟を仕事にしたので、オン・オフの境目がなくても平気。ワーク・ライフ・バランスが大事という人もいるけれど、僕自身はワーク・ライフ・ノー・バランスもよしという考え方です。家族も理解してくれて、仕事は順調、家庭も円満ですよ」。自由気ままなノマドライフを謳歌している山本さん。その目に、日本人の働き方はどう映っているのだろう。「コロナ前の会社はハコありきで、人もモノも管理されていました。でもこれからは自己管理のもと、何にもとらわれないワークスタイルが広がりそうです。海外でも日本にいるのと同じように仕事ができるようになるかもしれませんね」。自分らしい働き方とは何か。山本さんを参考に、今こそ見つめ直すよい機会かもしれない。
プロフィール
COLLABORIZE(コラボライズ)
山本 秀勝(やまもと ひでかつ)さん
1971年神戸市生まれ。神戸芸術工科大学を卒業後、金融関係の会社に就職する。その後アパレル会社などいくつか転職を経験し、ウェブを勉強するため専門学校へ。ウェブサイト制作などを行う会社でウェブディレクターを務めた後、独立。現職に至る。
インフォメーション
バンライフプラス
山本さんが運営する車旅やアウトドアをエンジョイしたい人のためのウェブサイト。ファミリー向けの車中泊スポットやアウトドア情報、格安グッズのレビューなどが掲載されている。ちなみにバンライフとは、バンを改造して自由に旅や暮らしを楽しむライフスタイルのこと。
取材ウラバナシ
山本さんの夢は、日本中を愛車でめぐりながら、ブログを書いて情報を発信すること。「子ども達の夏休みなどを利用し、家族で1カ月くらい九州や北海道を旅して。その間、僕はどこでも仕事ができるので」。山本さんの生き方に、心底憧れます!