コロナで苦境に立たされている夜の街。この難局を乗り越えようと、ママたちは試行錯誤を続けている。吉岡ようかさんもその一人。苦しい中で見つけたオンライン事業に希望を見出し、新たな夢に向かって歩み始めた。
コロナ禍での失敗と気づき
「従業員たちの生活を守りたい」。
藁をもすがる思いでオンラインスナックを始めたのは、コロナが猛威を振るい始めた2020年のこと。緊急事態宣言が発令され、夜の街からはネオンが消えていた。ものめずらしさからメディアにもてはやされたが、集客にはつながらなかった。「新規のお客さんを獲得したかったのですが、やっぱり知らない人とオンラインで話したいとは思わないんですよね」。コロナ禍で改めて商売の難しさに直面したが、新しいことをきちんと学んでみようと、10件以上のオンラインサロンに入会する。そこで教えられたのは、人のつながりを求めるなら、地域貢献が大事ということだった。「リアル店舗の経営でも同じなのに、なぜ気づかなかったのか。目先の自分の利益より、今は共に困っている人を助けることが優先だと反省しました」。
オンライン物産展を開催して
学びを通し、オンラインに可能性を感じた吉岡さん。形があるものなら売れると確信し、落ち込んだ地元飲食店の力になれればと「神戸応援オンライン物産展」を発案する。
仕組みはこうだ。仮想空間に店を並べ、お客さんがクリックすると画面上で店員とつながる。店員はお客さんに商品を見せながら作り手の思いを伝え、魅力をアピール。お客さんが気に入ったらサイトで商品を購入するという流れだ。初回は出店者集めに苦労しながらも、15店舗が集まり、約150人が来場。「費用対効果が良くありがたい。今後も続けてほしい」という出店者の声に励まされた。出店者間につながりが生まれ、協業への道筋ができたこともうれしかったと言う。
夜の街の女性を支援したい
第2回の開催からは店の従業員たちに協力してもらい、反響も広がった。一方で、オンラインイベントを継続するには、どう収益につなげるかなど課題が山積。情熱だけでは進めない現実に頭を悩ませた。「物産展を開催するにあたって、出店者にオンラインツールの使い方を無料で教えました。これを有料のセミナーにすれば、うちの従業員の昼の仕事になるんじゃないかと考えたんです」。多くの支援を得て、今年、一般社団法人日本オンラインイベント交流協会を設立。本格始動に向けて奔走する毎日は、戸惑いの連続ながら「楽しい」と声を弾ませる。若くして結婚と離婚を経験し、子どもとの生活を守るために飛び込んだのが夜の世界だった。水商売は世間が思うほど悪いものではなく、イメージを払拭したいと語気を強める。「夜の仕事だけで暮らす女性たちの将来を考えたとき、安心して働ける場と安定した収入を保障することが大事。経営に必要な知識が学べ、同業者と交流できる仕組みを私が作っていけたら」。新事業を足がかりに、夜の街の地位向上を目指す。
プロフィール
ラウンジ「サラヴォーン」代表
一般社団法人日本オンラインイベント交流協会 代表理事
吉岡(よしおか) ようか さん
1976年に中国で生まれ、4歳の時に神戸へ移住。2007年にラウンジ「サラヴォーン」をオープンする。2店舗目はコロナのあおりを受け、オープン1年で閉店に追い込まれた。現在はラウンジの営業を再開。夜はママ、昼は一般社団法人日本オンラインイベント交流協会(JOIC)の代表理事として多忙な日々を送る。
インフォメーション
神戸応援オンライン物産展
神戸に行かなくても、オンラインで気軽に街の名店巡りができる「神戸応援オンライン物産展」。コロナ禍で生まれた新しいスタイルの通販は、買う楽しみを広げている。次のイベントも企画中。過去の開催の様子や出店
の問い合わせなどはHPへ。
https://peraichi.com/landing_pages/view/nbhuo
取材ウラバナシ
「コロナが終息したらしたいことは?」との質問に、「アフリカに行きたい!」と即答した吉岡さん。大自然が好きで、愛する娘さんたちと一緒に、動物の群れを間近に見てみたいそう。早く実現できる日が来るといいですね。